マインドフルネスと禅の違い

マインドフルネスについて

マインドフルネス(mindfulness)と呼ばれる瞑想法について聞いたことはありますか?
言葉の意味は、仏教に由来する「念(sati)」の英訳で、「心をとどめておくこと」「気付くこと」と訳します。

マインドフルネスが世界で知られるようになったのは、マサチューセッツ大学医学校のジョン・カバット・ジン博士が「マインドフルネスストレス低減法」を提唱したことがきっかけです。
集中力の強化、うつ症状の改善などに効果的として世界で注目を集めており、アップル社、インテル、グーグル、ゴールドマンといった名だたる有名企業でも採用されています。

実は、マインドフルネスの方法も禅と同じように行います。
マインドフルネスの静座瞑想法は、静かに垂直に座った状態で呼吸に意識を集中し、気が散り他に意識が向いたときにはまた呼吸に集中する、これを繰り返して少しずつ集中できる時間をのばしていくというものです。
マインドフルネスを行うことで、集中力の向上、リラックス効果、さらに自己鍛錬のメンタル強化にも繋がると言われています。

禅について

禅とは、古代インド語であるサンスクリット語で、精神を統一し真理を追い求めるという意味を持つディヤーナの中国語音訳「禅那(ぜんな)」を略したもので、座禅を行う禅宗を指します。
禅の教えのもととなるのは、仏教思想の「不立文字」であり、これは文字や言葉を使うのではなく、修行によって教えを伝えることこそ禅の道・悟りであるという意味です。
なお、不立文字とは禅の始祖である達磨大師が問いたものであり、不立文字・教外別伝・直指人心・見性成仏の4つのつながり、四聖句と呼ばれるものの1つです。

マインドフルネスと禅の決定的な違い

マインドフルネスの瞑想法も日本の禅も、基本的な方法はどちらも同じに見えます。
事実、禅とマインドフルネスを混同して坐禅会に訪れる人もいるほどです。
ですが、この2つは瞑想を行う点では同じでも、本質はまったく別のところにあります。

マインドフルネスの瞑想法は、集中力がアップしたり、精神状態が安定したり、健康にも良い影響があるとして、その効果は学術論文で書かれるなど世界的に反響があります。
要するに、そうした効果やメリットを得るために行う瞑想法がマインドフルネスです。

ですが禅の場合は、効果を求めて行う行為ではなく、あくまで「悟り開く」ために瞑想を行うのです。
結果として集中力が高まるかもしれませんし、リラックス効果を得るかもしれませんが、それはあくまで結果であり、目的ではありません。
禅とは自分の心と向き合うために瞑想を行い、ゲインを求めない、それこそがマインドフルネスと禅の決定的な違いと言えるでしょう。